研究概要 |
レーザラマン分光法を用いて、混晶半導体中の原子間結合の評価を行った。本年度得られた主な結果は、以下のとうりである。 (1)混晶半導体中のクラスタを表わす指標であるクラスタリングパラメータと原子間結合に蓄積した内部応力の評価に、レーザラマン分光法を応用する方法を提案し、その妥当性を明らかにした。クラスタリングパラメータは、混晶半導体のラマンスペクトルに現れる二つのLOフォノンの強度比から、また原子間結合に蓄積した応力は、LOフォノンの周波数から評価を行った。この方法により得られたクラスタリングパラメータの値は、混合の過剰自由エネルギーの計算に基いて理論的に得た値とよく一致した。また、内部応力は直接比較する他の実験結果が無いため、応力に対応した原子間結合の長さを求め、EXAFSにより測定された結果と比較したところ、非常によい一致が得られた。混晶半導体としては、【Ga_(1-x)】AlxAs,【Ga_(1-x)】InxP,【Ga_(1-x)】InxAs,Ga【As_(1-x)】Pxを用いた。 (2)混晶半導体表面の電気的特性と原子間結合との関係を明らかにするために、まず表面をAGW法で陽極酸化し、アニールした際に陽極酸化膜中または酸化膜と半導体との界面に生じる析出物に著しい差のあることを見出した。これらの析出物はアニールの雰囲気や温度にも、強く依存することが明らかになった。混晶半導体の種類とアニール条件による析出物の違いは、界面での固相反応及び酸化物質の環元に伴う自由エネルギーの計算結果に基いて、説明できた。 (3)ラマンスペクトルのLOフォノン強度と励起レーザ光強度の関係に基き、各種混晶半導体の表面再結合速度を半定量的に比較したところ、【Ga_(0.47)】【In_(0.53)】Asの表面再結合速度は、【Ga_(0.52)】【In_(0.48)】P,Ga【_(0.78)Al_(0.22)】As等のそれらより小さく、反転型のMOSFETの製作にこれまで成功しているという事実と一致した。
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