研究概要 |
本年度は、研究実施計画にもとづき、1.分子線エピタクシー蒸発源を既存の超高真空電子顕微鏡につけ、2.混晶成長を電子顕微鏡内で"その場"観察するための基板結晶の表面トポグラフの評価を反射電子顕微鏡法を用いて行った。基板結晶として、(【i】)GaAs(110)壁開面,(【ii】)MBE成長させたGaAs(001)表面,(【iii】)Si(111)表面およびその上に蒸着したGe原子の成長過程を調べた。GaAs(110)表面では、1原子層レベルで平担な表面が得られ、1〜数原子層高さのステップが 1000〜数μmの間隔で〔110〕方向に形成されていることが反射電子顕微鏡像で見られた。この表面を加熱すると、ステップの位置は全く動かずに、表面全体が荒れていくことが反射電子回折図形から知れた。さらに加熱を続けると、表面の凹凸は顕著となり、パッチ状に平担な部分が残されることが知れた。GaAs(001)表面では、反射顕微鏡像に電子線入射方向とほぼ垂直方向にスジ状のコントラストが見られた。これらの縞が表面スラップに依るものとすると、ステップの間隔は 1000Å程度となる。この結果は、GaAs表面のトポグラフが反射顕微鏡法で捕えられた最初の例である。Si(111)表面、その上へのGeの成長過程の観察は、これらの上へのGaAsや混晶の成長(ヘテロ成長)の可能性と混晶成長の"その場観察"の可能性を調べる目的で行った。Si(111)表面にGeを1原子層レベルで蒸着量を制禦しながらつけると、Geは表面全体に吸着し、ある程度蒸着が進んだ段階で、Ge-5×5超格子構造がSiのステップエッジから形成されはじめて行くことが観察された。この結果は、混晶のMBE成長がステップエッジと密接な関連をもつかどうかを具体的に調べる観察法として反射電子顕微鏡法が有効であることを示した。本年度で、混晶成長過程を1原子層レベルで調べる"その場"観察法の基礎を確立した。
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