研究概要 |
(In,Ga,Al)Sb四元混晶は、将来の長波長光通信用デバイスの重要な材料であるが、この混晶のもつ特徴を発揮させるためには、全組成領域で格子整合が可能である(In,Ga)Sb三元混晶基板が不可欠である。本研究は混晶基板製作のための均一組成、大型(In,Ga)Sbバルク混晶の引上げと、(In,Ga,Al)Sb四元混晶の液相エピタキシャル成長への応用を目的としておこなった。 均一組成の(In,Ga)Sb混晶を引上げるためには、常に成長溶液の組成を一定に保たなければならない。これを実現するためにIn-Ga擬二元系の熱力学的性質を利用し、GaSb補給源を備えたルツボを用いて回転引上げ法による混晶引上げ実験をおこなった。まず、GaSb(111)Bを種子結晶として、673℃に成長温度を保つことによってInSb0.95モル分率の混晶成長を試みた。一例として直径約2cm,長さ約8cmの混晶が引上げられた。成長途中から双晶や多結晶の発生が見られたが、組成分析の結果、全体に亘ってInSbモル分率が0.975で一定であり、GaSbの補給が充分高速におこなわれたこと、また種子結晶の組成が引上げる混晶と若干異っていても単結晶の引上げが可能であること等が判った。混晶組成のくい違いは成長溶液用合金の融解過程を改良することによって無くすことができる。また、種子結晶に関する知見は、InSb成分のより多い混晶の引上げへと移行できることを示すものであり、種々の組成をもつ(In,Ga)Sb混晶基板製作の見通しが得られた。 さらに、混晶基板の利用を想定して、GaSb(111)B面上への(In,Ga,Al)Sb四元混晶の液相エピタキシャル成長実験をおこなった。そのために必要な四元系の平衡状態図を検討し、さらに成長溶液として均質な飽和溶液を得るため成長手順の改善をおこなった。その結果、良好な四元混晶成長層が得られるようになった。またデバイス設計に必要な禁制帯幅、格子定数等のデータが測定できた。
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