研究概要 |
混晶エレクトロニクスの分野で、素子状態を左右する重要な役割を果している【III】-【V】化合物半導体混晶を用いたヘテロ接合でのバンド端の不連続(band gap dis continuity:ΔEν)の問題を、接合界面での原子構造と電子状態の相互の関連を解明することにより解明することを目ざし次の研究を行った。 1.【III】-【V】化合物半導体混晶ヘテロ接合の製作:混晶半導体ヘテロ接合として、60年度は、光応用素子として興味が持たれている、歪超格子材料であるIn0.2Ga0.8As-GaAs 接合を分子線エピタキシー法(MBE)により製作することを試み、種々の構造をもつヘテロ接合の製作に成功した。 2.X線光電子分光法(XPS)によるヘテロ接合界面でのバンド端の不連続(ΔEν)の解明:混晶半導体として、In0.2Ga0.8As-GaAsヘテロ接合について XPS法により、ΔEνを調べた。その結果、実験の測定精度の範囲内(約0.1eV)でΔEν<0.1eVという結果を得た。これは、これまで報告されているGaAs,InAsの電子エネルギー状態とも矛盾しないものである。 3.電子分光法〔電子エネルギー損失分光法(ELS)、オージェ電子分光法(AES)〕によるヘテロ接合界面の原子的構造の解明:多層薄膜試料を非破壊的に構造解析することができる。筆者らが提案し、その有用性を明らかにした一種の電子分光法(Tunable ELS法)により上記ヘテロ接合界面の構造解析を試み、少なくともIn原子が界面でGaAs層へ拡散していることを明らかにした。また、イオン・エッチング法を併用したAES法により、ヘテロ接合界面の構造解析を行ない、接合界面での各層を構成する原子の相互拡散は高々1nmであることを明らかにした。
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