研究概要 |
本年度は主として、混晶薄層多重量子井戸(以下MQW)導波路に関して、その理論的検討と、基礎的バラメータ評価に関して研究を進め、来年度以降の本格的なデバイス適用への準備とした。 1.MQW導波路の理論的検討 (1)MQW導波路の解析法を確立し、その結果をGaAs-Alx【Ga_(1-x)】As構造に適用して、その界分布、分散特性の層数依存性を明らかにした。 (2)層数が十分多い場合(実際、デバイスに適用される場合に対応)、簡便な近似解法を得、導波路設計の指針を得ることができた。即ち、 ア,TEモードについては、MQWコア部分の屈折率を、その部分の屈折率のRMS値で代替し、3層構造として取扱ること。 イ,TMモードについては、上記RMS値に係数(<1)を考慮することにより、同様、3層構造導波路として取扱ること。 (3)複屈折性と、それを用いたTE-TMモードフィルター:(2)の結果、MQW導波路は複屈折性を持つことが明らかとなり、これを利用したモードアィルターを提案し、その特性を検討した。 2.MQW構造中の室温エキシトン吸収を用いたMQW導波路の評価 (1)GaAs(60Å)-【Al_(0.29)】【Ga_(0.71)】As(70Å)を70対、MBEにて作製し、導波路厚0.91μmとして、エキシトン吸収を測定した。 (2)エキシトン吸収スペクトル幅の温度依存性から、不均一性およびLO-フォノンの影響を調べ、室温動作では、従来予想されているより、狹井戸厚側において、よりよい特性が得られる事を示した。 (3)非線形光吸収特性の評価用として、半導体レーザ波長掃引装置を試作し、これによりエキシトン吸収スペクトルの飽和特性を測定1.特に、その励起波長依存性から飽和機構を検討した。また。中心波長において、非線形吸収係数【α_2】=52cm/Wという良好な結果を得た。 以上の結果は、来年度以降のMQW導波路設計に重要な指針となる。
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