溶液成長法を用いて、InAsPおよびGaInAs混晶半導体を作製した。結晶は数ミリ角の板状で、(111)面を主面とする、厚さ数百ミクロンの単結晶である。本方法で作製した結晶はサブストレートフリーであるので、基板の影響を受けず、混晶本来の性質を示すと考えられる。X線デフラクトメーターを用いて、(444)面回折線を測定し、その回折角から組成を決定し、また、回折線半値幅より組成分布を推定した結果、中央組成に近づくにつれて、組成にゆらぎのあることが示された。二結晶法によってロッキングカーブを測定したところ、構成化合物、例えばInPでは30秒程度の半値幅となり溶液成長法で極めて良質の結晶が得られることが実証された。しかし混晶になると、半値幅は5〜16分と広がり、また、いくつかのカーブが現われて、結晶性が著しく低下することが明らかとなった。これは構成化合物の結合半径の差に基づく内部歪エネルギーの増加に基因するものと考えられる。4.2Kから77Kの温度領域においてHe-Neレーザーおよび【N_2】レーザ励起ダイレーザを用いてホトルミネセンススペクトルの測定を行った。InAsP系のスペクトル線半値幅はほとんど組成依存性をもたなかったが、GaInAs系では、組成中央付近では約数倍に半値幅が増大した。このことは内部歪エネルギーの大きさの計算結果と矛盾しない。レーザラマンスペクトルの測定を行ない、InAsP系は、2モードフォノンスペクトルを示すことを明らかとした。クラスター生成についてのシュミレーションを行なって、クラスタリングパラメータが正であれば、同一化合物が集まりやすく、組成のゆらぎを生ずることを示した。また、弾性球体モデルを用いて内部歪エネルギーの計算を行なって、その組成依存性から混晶中のエンタルピーの増加は内部歪エネルギーが主たる原因であることを示し、混晶生成の難易度の目安を与えた。
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