研究概要 |
量子井戸中の励起子に、電場磁場を印加すると、その波動関数への外場効果により励起子のダイナミクスが変化する事が予想される。特にバルクにおいては励起子が存在できない程強い電場中でも、二次元励起子は安定に存在でき、大きな電界効果が期待され又、磁場中では励起子の低次元化によるサイズ効果が期待される。本研究ではMOVPE法によるGaAS系量子井戸の作製、二次元励起子の電界、磁界の外部場効果によるダイナミクス変化について行った。1.量子井戸作製-我々のMOVPE装置で、先ず典型的なアンドープGaAsを製作し、そのPLスペクトルをHe温度で調べた。(D°,X)(A°,X)等の鋭い束縛励起子の発光線が見られ、又、自由励起子の発光もあり、高純度GaAsが成長出来ている事が確認された。又、GaAs/【Al_(0.6)】【Ga_(0.4)】As単一量子井戸(SQW)を製作し、そのPLスペクトルを調べた。SQWの発光ピークより、井戸幅を計算すると約14mmであり、SQWが製作出来ているものと思われる。2.電場中での二次元励起子-MBE法で作られたGaAs/【Al_(0.4)】【Ga_(0.6)】As多重量子井戸にショットキー電極を用い多直に外部より電界を印加した。電界印加時に発光量の減少、発光ピークの低エネルギーへのシフトが観測された。又、電界と共に発光寿命が長くなる事が解った。これは外部電場により、実空間で励起子の分離が生じ、電子正孔の波動関数の重なりが小さくなり、遷移確率が減少した為と考えられる。3.磁場中での二次元励起子-量子井戸に多直に磁場を印加すると、二次元励起子の局在化が進み、ゼロ次元に近づくと考えられる。又、磁場によりランダウ準位が生じ、エネルギーの緩和過程にも、ランダウ準位と量子化準位との競合等といった問題が表われてくる。本実験では磁場の増加と共に、発光が高エネルギーシフトし、又、発光量も増加する事が解った。又、発光の立ち上り時間をピコ秒分光した結晶高磁場下においては、立ち上り時間は長くなる事が分った。
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