研究概要 |
シヤジクモの節間細胞では膜興奮時に一過的に【Ca^(2+)】が増加し流動が停止する。この【Ca^(2+)】による流動制御機構を脱膜モデル(Tazawa et al.1976,Shimmen 4 Tazawa 1981,Tominaga et al.1983)を用いて研究した。 まずカルモジュリン(CaM)の阻害剤トリフルオロペラジン、フルフエナジン、W-7はいづれも【Ca^(2+)】による流動停止は阻害せず、一旦停止した流動の回復を完全に阻害した。またATPの類似体でフォスファターゼで脱リン酸化されないATP-γ-Sもやはり流動の回復を阻害した。これらの事実からわれわれは、流動に関与するタンパク質、恐らくはミオシンが脱リン酸化状態で力を発生し流動をひきおこすが、【Ca^(2+)】によるプロティンキナーゼの活性化によりリン酸化を受けると流動は阻害される、しかしCaM-Caの作用によりプロティンフォスファターゼが活性化され脱リン酸化されるとふたたび流動するという仮設を提唱した(Tominaga et al.1985)。 この仮設を検証するため、まず液胞膜除去モデル内に【Ca^(2+)】と同時にプロティンフォスファターゼ1を導入したところ、【Ca^(2+)】存在下でも流動がおこり、これにフォスファターゼの阻害剤(天然の)を与えると停止した。また人工的な阻害剤のα-ナフチルフォスフェイトを脱原形質膜モデルでは外から、液胞膜除去モデルには内側から与えると何れの場合にも【Ca^(2+)】なしで流動は停止した。これらの事実は上記のリン酸化-脱リン酸化仮設を支持するものである。
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