研究概要 |
カルシウム・ポンプ並びにカルシウム・チャネル蛋白質を、電気生理学的手法が適用できる膜系である巨大ベシクルに再構成することを目的とした。初めに、脂質のみから成る巨大ベシクルの生成する条件を検討し、次いで、筋小胞体膜蛋白質を組み込んだ巨大ベシクルの調製法を開発した。 1.種々のリン脂質から超音波処理によって小さな単層リポソーム(SUV)を調製し、これを凍結-融解処理して巨大ベシクルを得る条件を検討した。アゾレクチン(AL),卵黄ホスファチジルコリン,又はこれらに少量の酸性リン脂質(ホスファチジン酸(PA),又はホスファチジルセリン(PS))を加えた混合物からは、巨大単層ベシクル(GUV)の生成を位相差顕微鏡下に認めた。これに、微小電極を刺入し、膜の電気容量を測定して、単層膜であることを確認することができた。凍結-融解の際の塩濃度は、50-300mM Kclが適当で、0や1MではGUVは生じなかった。コレステロールを添加したものや、PS,PA,ホスファチジルイノシトール単独では巨大ベシクルは生じなかった。一方、ホスファチジルエタノールアミンを主成分とする脂質からは、高収率で巨大多重層ベシクルが生成した。 2.筋小胞体膜ベシクルをアゾレクチンと共にデオキシコール酸で可溶化し、透析して、脂質置換SUVを調製した。これを凍結-融解したところ、脂質のみの場合と異なって、直径1μm程度のベシクルを生じるのみで、十分に巨大化しなかった。そこで、ベシクルを誘電泳動法により配列・接触させたところに、高電圧パルスを与える、いわゆる電場融合法を適用することによって、巨大ベシクル化した。 3.以上より、膜蛋白質を巨大ベシクルに再構成する方法をほぼ確立できた。今後、この系を実際に用いて、電気生理学的測定法によりカルシウム輸送を測定する予定である。
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