研究概要 |
アルドラーゼB遺伝子の発現調節機構に関する情報を得るために、本遺伝子のメチレーション、クロマチン構造の解析、および5′上流域に結合する蛋白の検索を行い次のことがわかった。 1.成体組織ではcap site付近から5Kb下流にかけての領域の低メチル化(Hpa【II】およびHha【I】サイト)と発現との相関がみられた。本遺伝子の発現の低い胎仔肝やガン細胞ではこの領域のメチル化の程度は高い。 2.発現型のクロマチンは非発現型のそれに比べてDNaseに攻撃されやすい、ゆるんだ構造をとっている。また、cap site上流域0.2Kb付近は、発現型のクロマチン上でのみ高感受性領域となっていた。しかし、この領域は、発現の非常に低い胎仔期肝においてもすでに高感受性を示す構造となっていた。 3.5′上流域に結合する核蛋白をFilter binding assayおよびProtein blotting法で検索した結果、肝の-2.6Kb(サイト【I】)および-0.2Kb(サイト【II】)の2ヶ所のDNase高感受性領域近傍(0.4〜0.8Kb以内)に結合する蛋白が肝核中に存在した。サイト【I】付近に結合する蛋白は分子量42K,サイト【II】に結合するのは分子量45Kと35Kの2種であった。これらの蛋白は高感受性を示さない脳には存在しない。しかし、サイト【II】には95Kの蛋白が結合することがわかった。 これらの結果から本遺伝子の発現には、クロマチンの構造的制約が関与すること、またその特異構造の構築には組織特異的な蛋白が関与するらしいことが示唆された。また、肝の発生過程では転写か活性化する以前に活性型クロマチン構造の構築は完了しており、遺伝子の脱メチル化は転写活性化と同時あるいはそれ以後におこることが考えられた。さらに、以上の結果は、活性型クロマチン構造に作用する何らかの転写促進因子の存在が本遺伝子の発現に必須であることを示す。
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