研究概要 |
マウス神経芽腫細胞(Neuro 2a,NS-20Y,NIE-115,NAs-1)よりグリア芽細胞の増殖を抑制する因子(グリア細胞増殖抑制因子、GGIF)の産生統をスクリーニングした。 〈方法〉 Neuro2a,NS-20Y,NIE-115は10%FBSを含むDMEM培地で、またNAs-1とグリア芽細胞は10%FBS含有F-10培地で培養した。NAs-1の条件培養液より85%硫安塩折、DEAE-Sephacel,Bio-Gel P-200でGGIFを部分精製した。GGIF活性はグリア芽細胞の【^3H】-チミジン取込み(DNA合成)の抑制を指標とした。S-100タンパクはサンドイッチ型のEIA法で定量した。 〈結果・考察〉4種の神経芽腫細胞のうちマウス腹水型神経芽腫細胞NAs-1の培養液に強いGGIF活性が認められた。この因子はDEAE-Sephacelカラムに吸着する酸性タンパク質で、GGIF1(33-40.5KMr)およびGGIF2(31-34KMr)の2成分に分かれた。GGIFはラット正常グリア芽細胞、アストロサイトーマ(GA-1)やシュワノーマ(354-A)のDNA合成および細胞分裂をdose-dependentに抑制し、グリア細胞成長因子(GMF)によって刺激されたブリア芽細胞に対しても、DNA合成促進および細胞分裂促進を抑制した。GGIFは、GO期にあるグリア芽細胞のGMF刺激によるS期への誘導を特異的に抑制した。しかし、GMFの持つグリア芽細胞分化促進能に対しては阻害害果を示さなかった。すなわち、グリア芽細胞のGMF刺激によって誘導されるアストロサイト様細胞への形態分化がGGIFによって阻害されなかった。さらに、GMF刺激によるグリア芽細胞内S-100タンパク含量の上昇に対してもGGIFは影響を与えなかった。これらの結果より、GGIFはグリア性細胞の増殖を抑制しグリア芽細胞に対してはGMFによる細胞増殖促進効果のみ阻害し、細胞分化促進効果には影響を与えなかった。
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