ガングリオシドには多くの種類が知られており、ガングリオテトラオース系でN-アセチルノイラミン酸を含むものでけでも20種以上存在している。従来、微量成分故に同定できないものがあり、それらの中に神経活性物質として作用するものがあると期待されているところである。そこで新しい材料より未知のガングリオシドを単離、同定することを目的とした。 1.方法:ラット腹水肝癌を材料として用いた。全脂質を抽出し、エステル脂質を分解除去後、完全アセチル化法により粗ガングリオシド画分を得た。そのものをDEAE-カラムにかけてシアル酸のモル数による分画を行なった。ジシアロ画分をヤトロビーズカラムで精製した。純度は薄層クロマトグラフィーで検定した。糖組成はガスクロマトグラフィーで分析し、糖結合位置は完全メチル化法で解析した。シアル酸の結合位置はシアリダーゼで、アノマー分析はNMRで行なった。 2.結果と考察:ラット腹水肝癌細胞より単離された未同定ガングリオシドにGDIαの略号を付した。糖組成はグルコース、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸、スフィンゴシン(1:2:1:2:1)でGDIの構造をもつものと考えられた。メチル化実験ではN-アセチルガラクトサミンに分枝構造を有する証拠が得られた。即ち、当該ヘキソサミンの6位にもう一個のシアル酸が結合していると推定された。Cl.perfringensのシアリダーゼでは全てのシアル酸が遊離したが、NeuAcα2-6Gal結合を切り難いとされているNDVシアリダーゼでは一個のシアル酸しか鈴れなかった。その際GMIαとおもわれるものを生じた。NMRでアノマー分析を行ない次の構造をもつ新しい系統のガングリオシドであることが明らかとなった。NeuAcα2-3Galβ1-3(NeuAcα2-6)GalNAcβ1-4GalβGlcβ1-1Cer.この特異なガングリオシドについて今後神経細胞賦活作用について検討される必要がある。
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