Sanfilippo症候群(ムコ多糖症【III】型)には遺伝的異質性が存在し4型に分類されている。本研究は頻度の高い本症B型およびA型の酵素診断に関し基礎的検討を加えたものである。 本症B型の欠損酵素Nアセチル-α-グルコサミニダーゼは、培養皮膚線維芽細胞を用いて測定する場合、細胞を35℃で培養すると通常の37℃での培養と比較してその活性が3倍と上昇した。一方、培養温度を37℃から39℃まで上ゲてみても、本酵素活性が著しく低下するということはなく、正常の線維芽細胞と本症B型患者由来の細胞では明らかに差を認めた。以上より、培養皮膚線維芽細胞を用いた本症B型の診断には、37℃培養の細胞で充分であり、Hallらの指摘したように35℃培養細胞が必ずしも必要というわけではないとの結論に達した。しかし、35℃で37℃の3倍の活性が認められるということは、保因者診断や胎児診断においては、35℃における倍養も考慮されるべきであることを示すものであった。 次に本症A型の欠損酵素スルファミダーゼの培養皮膚線維芽細胞を用いた測定について検討した。本酵素は、従来【^(35)S】ラベルのヘパリンを基質として測定されていたが、ヘバリンより作製したトリチウムラベルのN-Sulfated disaccharideが本症診断のための基質として極めて有用であることが明らかとなった。
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