研究概要 |
めまぐるしく動く現代の生活にあって, コモン・センスの問題はいかに注意されても注意されすぎることはないであろう. とりわけ, 芸術に対するその役割については. 私たちが美や芸術について考えるばあい, 私たちは常に日常という原点にたち還らなくてはならない. 美や芸術の事象は, 日常のなかに起り, そこに畢る. そこで私たちはこれらの事象をコモン・センスの視点から解明しようと試みたのであり, かつそのばあい約十年間にわたって定着させてきた比較芸術学の方法に拠りつつ,それをなした. I.原理的研究として--後藤「コモン・センスと美的ナチュリズム」, 武藤「インガルデン理論における美的価値, II.比較思想ないし比較芸術学からの個別研究として--増成「現象学への疑念-"見る世界と芸術のレゾン・デートル"への序章」, 石川(毅)「芸術教育と生活-芸術教育学と"与り"の美学」, 石川(満)「仏像の着衣表現と様式試論-衣文を主として」, 谷川「作品"のトポロギー」, 鈴木「表層テクストとしての書物」, 石津「芸術の受容-コミュニケーション機能としてのカタルシス」, III.芸術ジャンル論からの個別研究として--鹿島「諸芸術の体系とコモン・センス」, 角倉「音楽受容の諸相」, 佐藤「ウィリアム・モリスのステンド・グラスー初期作品を中心として」, 永井「後期ゴシック美術における芸術表現とコモン・センス」, 土田「ブルックナー受容史の資料-初期の演奏の記録」, 大熊「オーデブレヒトとカントの感情理論」, 高橋「ルーカス・クラナッハの宗教画の一側面)etc. 以上のように, 担当者の研究もそれぞれの立場からなされた多彩な論述となっているが, 私たちの本テーマに対する研究の心構えはみな一つであった.
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