研究概要 |
都市家族の世代間関係に関する研究は, わが国の場合, 三世代家族・あとつぎ家族の問題を中心としてなされてきた. われわれは同居と非同居を含めて, より直括的, 分析的に把える方法を採用した. ここでいう世代間関係とは結婚した個人にとって, 本人および配偶者の定位家族, とくに親との関係をとくに指すとともに, 既婚子をもつ段階の個人にとっては, 親および既婚子家族との関係をいう. 本調査は札幌・仙台および福岡という地方中核都市三市に居住する20台後半から70台前半までの有配偶男女, 1531人を対象として個別面接調査を行ったものである. 分析結果によると, まず第一に, 親との同居および既婚子との同居について, 夫方とくに長男との同居が優位を占めているものの, 若い結婚コーホート群では妻方ないし娘との同居も増えてきている. 第二に, 同居子の有無が非同居子との関係に影響を与えているか否かを検討するために, 同居子のいるグループと非同居子のみのグループの比較を行ったところ, 非同居子との関係で, 札幌と福岡では一部においてニーズ説が妥当するのに対し, 仙台では逆に, 団体家族の実在を予想させる傾向がみられた. 第三に, 夫方・妻方, 息子方・娘方の家族間結合関係の非対象性についてみると, 一般に, 親との関係で長男との関係が強く現われ次男三男や娘との関係が弱いとはいえ, 既婚子世代とでは, 娘と近くに住み, 娘とのサービス交換が目立っている. 伝統的な家規範の弱化に伴い, 長男優位は減少し, 近住, 愛着, 性別役割, 葛藤回避の複合的産物として, 娘との日常的なサービス交換が強まってきているといえよう. それと同時に, 距離による制約を受けにくい経済援助をはじめ, 盆・正月のような特定時の訪問, 中元・歳暮のような贈答行動など, ある程度フォーマルな関係に関しては, それほど疎遠とはいえない水準において対称的な世代間関係が維持されている.
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