研究概要 |
本研究では, 「当事者団体」としての学童保育運動と障害者の地域作業所づくり運動を対象に, その住民自治組織としての性格をとりあげた. このふたつの運動に共通する特徴として, (1)運動の主体が生活問題をかかえている当事者である, (2)制度的対応の不十分さのため, 当事者により事業運営が行われている, (3)要求運動も日常の事業運営にもとづいたものであり, 地域社会を考慮にいれたものとなることが多い等があげられる. 当事者活動の機能を「サービス形成」機能と「サービス内容創出」機能と呼ぶと, 後者には利用者の参加保障を通じて, 公的な社会福祉サービスの欠陥としての官僚化を防ぎ, 発達も要求内容に含めてゆく可能性が内包されていると思われる. 以上の仮説にもとづいて, (1)学童保育については(1)横浜市と川崎市の学童保育所対象の郵送調査, (2)指導員対象の郵送調査を全数調査として, (3)川崎・横浜市から計9箇所の学童保育を抽出した利用世帯調査を, (2)横浜市の障害者共同作業所の事例調査を行った. まず(1)の学童保育機関の調査では, 親による共同保育として補助金なしで開始したところが多い. 補助金交付の要件とされている運営委員会については, 形式的役割に留まらないものの, 肯定的な評価と否定的な評価とに分かれている. また運営については, 保育料や人権費, 施設への公的補助の少なさと父母負担の重さが顕著である. (3)の利用世帯調査では, 生活基盤や子育てにおける人間関係の安定した階層の一方で, 生活基盤が不安定で地域でも孤立している階層も多くみられた. 父母の要望としては, 公的補助の充実と父母の主体性を尊重した運営委員会活動があげられていた. 学童保育, 障害者の地域作業所の両者とも地域との関係は不足していた. 今後の課題としては, 地域と施設の橋わたしや地域形成への専門性が望まれる.
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