研究概要 |
われわれの総合研究は「中央ユーラシア史の再構成という課題をかかげたものであった。中央ユーラシアとは、ユーラシア大陸の中央を占める地域をさし、従来の世界史像では、東では中国、西ではヨーロッパなどの文明世界の辺境民,蛮族,侵略者たちの地として扱われるのが常であった。この地域の諸民族の本来の姿を正確に杷握しようとするのが中央ユーラシア史の再構成という構想である。かれらは自らの手による文献記録を、多くは残さなかった。しかし中世以降になると碑飾類にはじまり、各種文書資料、宗教経典類、年代記その他もつくられるようになった。それらの多くは前世紀末以来の中亜探検で発見され、新発見はいまなお続けられている。本研究の課題に「新出資料の基礎的研究」というのをあえて副題として加えたのは、このような世界の学界の現状を考慮し、ともかく現段階で可能な新出資料を中心とした中央ユーラシア史像の構成ーその意味で「再構成」としたーを試みようとしたからである。 われわれの研究期間は、残念ながらわずか1年半にしか過ぎなかった。しかし各研究分担者は、上記のような課題に沿い研究を進めた。綜合研究の実をより能率よくあげるために、全体を大きく以下の4研究班に編成した。1.中央アジア史(1)、トルコ・ウイグル語文献等,山田・小田・梅村・森安2.中央アジア史(2) 中国文献等,長澤,日比野,岡本,松崎。 3.北アジア史,満州・モンゴル語文献等,松村,護,若松,吉田。4.西アジア史,ペルシア・アラブ語文献等,佐藤,佐口,本田,松田。各班ごとに対象言語・文字の文献,とくに新出資料の整理・研究を、分担あるいは共同して進め、必要に応じ、連絡会議を行い、班代表者の連絡会議も行ない、当初の計画通り、ほぼ研究計画を実施することができた。その内容は別冊研究成果報告書に取りまとめた通りである。
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