研究分担者 |
末川 清 立命館大学, 文学部, 教授 (00066614)
永井 三明 同志社大学, 文学部, 教授 (60066058)
井上 雅夫 同志社大学, 文学部, 教授 (50097854)
浅香 正 同志社大学, 文学部, 教授 (70066059)
大戸 千之 立命館大学, 文学部, 教授 (30066708)
宮沢 正典 同志社女子大学, 教授 (40125117)
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研究概要 |
本研究の目的は, 宗教意識が民衆生活においてどのような役割を果したか, さらにそうした民衆が, 宗教の次元において, 社会運動, 政治権力とどのような関わりをもったか, を欧米史上の事例に照らして明かにするところにあった. その結果をまとめれば次の如くである. すなわち, 民衆における宗教意識は, 一つの本質と二つの作用方向をもっている. 同じ神, 同じ教義を信じ, 同じ宗教儀礼に参加することは, 人間意識の底に社会集団への強い帰属意識を育成し, 醸成するものであり, 社会的連帯の最も強い紐帯を形成するものである. 宗教のこの社会構成かは, 日常的静的形態においては, 社会の現状維持, 既存の政治体制の保守へと働く. これが内的方向へと働いた場合の, 宗教意識の作用である. 第二の作用方向は外的なそれであり, この場合には, 異宗教の侵入に対して頑強に抵抗し, あるいは既存の信仰生活内部に生じた腐敗に対して猛然と矯正, あるいは革新の運動に立ち上る. この発現形態は, 激しく動的であり, 歴史的には多くの場合, 新しい社会生活・政治形態へと結実するのである. 以上が抽象的な結論であるが, 各分担研究者はこれを欧米史上の諸局面について究明した. 例えば, ローマ帝政の成立にさいして, アウグストウス帝は民衆における皇帝神格化への熱望を巧みに取り入れて権力の基盤を強化し, また聖職叙任権闘争において皇帝ハイシリヒ4世が, カノッサ屈辱時を除いて, 終始強気であったのは, 民衆における皇帝の治癒力(ハイル)に対する熱烈な信仰が基礎にあったからである. ドイツ宗教改革前後を通じて, カーニバル祭において, 教会の腐敗を痛烈に諷刺する行列や野外劇が上演され, 改革への民衆の共感をかきたてたこと, アメリカ独立革命時にも同様な事例が起ったことが報告されたが, これは宗教意識の外的作用の好例といえるであろう.
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