研究分担者 |
松尾 雅嗣 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40106787)
山中 哲夫 愛知教育大学, 第一部, 助教授 (30144182)
川口 顕弘 千葉商科大学, 商学部, 教授 (40049929)
大内 和子 いわき明星大学, 一般教育部, 助教授 (80152049)
藤田 衆 名城大学, 法学部, 助教授 (40148309)
KANAZAWA KOUKO Seijo University, School of Law, Professor
SHIBATA Mitiko Kinjo-Gakuin University, Assistant Professcr
山田 登世子 愛知淑徳大学, 助教授 (90100544)
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配分額 *注記 |
5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
1987年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1986年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1985年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
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研究概要 |
フランス幻想文学を理論的に規定し, 該当する作品をできうるかぎり読んでその全体像をあきらかにすることをこころみた. そのためには文字のみならず音楽, 絵画, 精神史, 神秘主義, 社会史等からのアプローチもこころみ, また, 幻想文学が形成される前段階としての中・古文学や, 民間伝承の作品も検討したが検討にあたっては, 「超自然の日常世界への侵入」を具象的に証言するものとしての人形・仮面・分身の形象と表現に注目し, 具体的世界の写実の不十分な観念的作品や, いたずらな夢魔の記録を付けた. これにさらに都市の視点を加えることによって, 悪魔と古城という, 前代の怪奇文学のテーマと場所から出た近代の幻想の人物構造とトポスとが明確化されるに至った. 仮面とはひとりジャン・ロランのテーマではなく, 分身とはポーヤドストエフスキーにのみあるのではなく, そして人形とはベルナールの表現手段に限定されるのではなく, 広く近代幻想文学の主人公が存在の不安に直面したときに見る超自然の自己像の一般的な形象であり, あらゆる幻想的ヒロインにホフマンの自動人形オリンピアの変容が見られ, あらゆる幻想の都市空間にマイリンクのゴーレムがひそんでいることが, 個々の作品の検証によって示された. すなわち, 一部においてなされている幻想文学の定義がある〈悪魔の出てくる文学〉のかわりに〈世界を仮面性の象徴のもとにとらえることによって, 真実の自己の隠蔽, 変身, 疎外の認識に至る方法〉と考えることができるというのがひとつの結論である. そのようにして認識された自己, ないし世界をいかにして表現するかにおいても, 語り構造における人称の分身性, 仮面性, 人形性が顕在化するときに幻想文学が成立することが確認された.
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