研究概要 |
実解析学および函数解析学の各分野での研究が進展し、解析学を中心とする数学とその周辺の科学の諸問題と関連する多くの成果を得た。テーマに従って5グループに分けて報告する。 1.偏微分方程式論への応用.非線型偏微分方程式については、非線型のシュレーディンガー方程式,Vlasov-Maxwell方程式,方程式ΔU+【λe^u】=0などについて、超函数論では、無限階微分作用素,境界値問題の定式化,ミクロ局所化の理論などについて成果が得られた。擬微分作用素の有界性の精密な十分条件がわかった。 2.作用素環論の応用.作用素環それ自身の構造の研究と共に、例えば幾何学との関連の深い結果も得られた。Jonesの因子環の指数,Baum-Connes予想に関する研究が進み、函数環に関連して、Banach函数環の函数演算,マルチンゲール理論のハーディ空間への導入など著しい成果を得た。 3.函数空間論の応用.Douglas環,Parreu-Widom型領域,可測函数の空間における凸プログラミングなどについて多数の成果を得た。また、ノルム空間へのBirkoffの直交性の一般化,抽象的非線型方程式およびその具体的方程式への応用などについても研究が進展した。 4.実解析学の応用.実解析学の固有の領域を越えて、解析学や幾何学と関連する多くの研究成果が得られた。多変数のフーリェ解析,擬微分作用素,特異積分,群上の調和解析,負曲率多様体上の調和解析などがその主なものである。 5.群の表現論,半単純群,半単純対称空間,対称空間上のフーリェ変換論,可解群の単項表現,離散群の表現の分解など著しい結果が得られた。一方、代数幾何学に関連したD加群の研究,無限次元の群の表現など枠組み自体を変えて行く研究も進められた。
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