研究概要 |
本研究は, 1)潮汐データの解析・評価, 2)海底地形効果, 3)潮汐定数の精密決定, 4)海洋潮汐モデルの作成, の4つのグループを編成し, 相互に検討を重ねながら, 全体を総括して進められた. 1)については, 従来, 各機関あるいは個人で別々に行われていた資料の解釈・評価を, 潮汐解析.プログラムBAYTAP-Gの普及をとおして, ある基準にもとづいた, 統一的な取り扱いができるようになった. また, 解析の基礎となる潮汐ポテンシャルの改良も行われた. 2)については, 気象庁による定常的な外洋潮汐観測資料(津波計)や, 海洋研究所による, 海底圧力, 底層流, 潮流の測定にもとづき, 内部潮汐のモデルの計算が行われ, 潮汐に及ぼす海底地形効果が明かにされた. この成果は, 潮汐の問題のみならず, 海流や海洋の大循環の問題についても重要な示唆を与えることができた. 3)については, 観測面からは, スプリング型重力計の零位法への改造を進めるなど, 観測精度の向上に努めた. また, 歪ゲージを用いた観測により, 簡便でしかも高密度観測への可能性が示された. これらの観測成果は, 1)の研究成果と相乗して, 精密な潮汐定数が求められるようになった. 4)については, 計算機シミュレーションによる, 日本海の潮汐図の作成が行われた. 検潮(験潮)資料にもとづく経験的な手法と, 従来からのシミュレーション結果の比較や, それらを組み合わせることにより, 日本沿岸の潮汐図の精度向上が試みられた. これらの成果は, おもにM2分潮によるものであったので, 他の分潮については今後の課題として残っている. 超伝導重力計のような高精度の観測機器の導入が, 各機関で進められている中で, 本研究の課題と成果は, さらに重要性が増したものといえる.
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