研究概要 |
この研究で意図したのが, これまで余り総合的に捉えられていない積雪地域の住宅あるいは住空間の全体を捉えることである. 以下にこの研究によって得られた知見を, 分析の視点ごとに示す. 1.住戸群空間・住戸廻り空間 8つの計画指標によって各都市の住戸を比較した結果, 札幌, 秋田は低い密度によって, 北陸4都市は住宅規模が大きいことによって, 東京と異なっていることが分かった. 敷地面積が大きいものほど主庭空間と前庭空間との分離の程度が高いことが分かる. 2.生活空間と住宅空間の構成 札幌が住宅規模の大小に係わらず様式の居間を大きくとり, 通路空間を小さくしているのに対して, 金沢, 長岡では, 座敷の茶の間や様式のLDKを持つものが混在し,接客空間を別に持つものが多い. 住空間構成を分類して, 各都市の比較すると, 札幌はE型が大半で, 他の5都市とは異なっていることが分かった. また, 神戸では, 1階に洋間公室と和室, 2階に個室という構成多く, 東京と似ていると思われた. 3.室空間, 暖房方式, 構法 炊事, 食事, だんらん, 接客, 世帯主の睡眠の5つの生活行為を取り上げ生活型を分類すると, 札幌と長岡では「接客併用型」, 秋田, 上越, 金沢では「居間集中型」, 新潟では「接客分離型」が多いことが分かった. また, 居間の起床様式は札幌では椅子式が中心で10-12帖, 長岡, 金沢では座式が多く8帖程度である. 新潟, 長岡, 上越では1戸あたりの暖房器具数が4台近くになり, 開放型の石油ストーブが多い. 構造部材では, 各地域とも材木の樹種に関しては少しずつ違いがあり, 入手しやすいものを多用する傾向がある. 4.デザイン観, 住居観, 住意識 デザイン観は, 札幌は近代性の好みが極めて強いのに対して, 金沢は逆に圧倒的に伝統的デザインが好まれており, 長岡は両者に分れている.
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