研究分担者 |
高橋 克忠 阪府大, 農, 助教授 (30081532)
高木 定夫 近大, 理工, 教授 (80088369)
村上 幸夫 阪市大, 理, 教授 (50046984)
八田 一郎 名大, 工, 教授 (70016070)
谷口 雅男 東工大, 工, 教授 (60016277)
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研究概要 |
高精確度の熱測定データは, 伝統的に多量の高純度物質を使用するという代償の上に得られたものである. カロリメータのミクロ化は, 新物質合成技術及び特性評価法の発展に伴う必然的な社会的要請である. 幸い本研究班の発足と多くの周辺技術の発展に支えられて, 種々の分野にわたるミクロカロリメータの開発に大きな前進が可能となった. 例えば第三法則エントロピーの測定は1g以下の試料量では可能となり, また燃焼熱測定に必要な試料量は従来型の1/100量で済む程度にまで改良が重ねられた. AC法による熱物性測定では, 1μlの試料量で可能な方法が開発され, 新しい発展が期待される. このような非反応系及び反応系カロリメータのミクロ化の成功によって測定対象は飛躍的に拡大され, 新しい熱科学への道が開拓されつつある. 例えば-ベンゼンー重ベンゼン二成分系の微少な混合熱が全組成領域にわたって精密決定され, 分子間相互作用に関する新しい知見が導かれた. 極低温に蒸着して得られた非晶性試料が, 液体急冷試料よりも遥かに低い温度から非線型的エンタルピー緩和を起こすことが明らかにされた. 地球関連物質のように微量しか合成し得ない物質についても, 次々に測定が拡げられつつある. 10mKまでの極低温域で熱容量測定の可能なカロリメータも開発され, 極度に弱い分子間相互作用に関する知見が得られるようになった. 生物カロリメトリーの分野でも生体及び関連物質の熱測定に一段と拍車がかかり, 生体機能発現に必要な水の構造変化と相互作用に関する知識が集積されつつある. 三年の間に三回の研究会が開催され, 班員の研究成果と将来の展望に関する議論のみに止まらず, 適宜ゲストをお招びして関連分野における熱測定の問題点が討議され, 班員全体が非常に大きな刺戟を受けた.
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