研究分担者 |
石和 貞男 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (20017205)
武藤 〓 (武藤 あきら) 名古屋大学, 理学部, 助教授 (80034635)
大沢 省三 名古屋大学, 理学部, 教授 (10034620)
太田 朋子 国立遺伝子研究所, 集団遺伝研究系, 教授 (80000256)
向井 輝美 九州大学, 理学部, 教授 (30091242)
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研究概要 |
本研究班の最終年度に得られた主な成果は次の通りである. (1)分子進化速度の系統間における一定性の問題に関してはデータ解析及び集団遺伝学理論の立場からの研究を進めた. その結果,突然変異率の系統間における変化および遺伝子の機能的制約の変化が分子進化速度に重要な影響を及ぼしていることが明らかになった. このことは分子進化の機構として中立な突然変異の重要性を再確認するものである. (2)多量遺伝子族が創造される過程の研究を計算機シミュレーションを用いて行った. その結果,多量遺伝子族の生成過程にはダーウィン的な生存に有利な突然変異の必要性が明らかになった. (3)核外遺伝子の進化を研究するため,キイロショウジョウバエ属の3つの近縁種でミトコンドリアDNAの塩基配列を決定した. その結果昆虫のミトコンドリアDNAも哺乳類のものと類似の進化機構をもつことが明らかになったが,開始コドンの1つが4塩基から成る異常も発見された. またこれらの塩基配列の情報は,キイロショウジョウバエ属の近縁関係を更に詳しく研究する上で有用である. (4)トランスポゾンの1つであるP因子をキイロショウジョウバエのいくつかの系統を用いて解析したところ,転位を制御する遺伝子の存在が明らかになり,従来の仮説のように転位酵素が不完全なP因子に結合するために制御が起るのではないという結論を得た. (5)現在利用できる352の5SrRNA塩基配列の比較を行い,分子系統樹を作成した. その結果真性バクテリアのいくつかの大きなグループが生物進化の非常に早い時期にすでに分化していたことが明らかになった. (6)遺伝暗号は従来不変であると考えられてきたが,近年異常な遺伝暗号がいくつかの種で明らかになってきた. この研究では遺伝暗号の進化にはtRNAの重複が関与していること,また塩基含量の偏りが大切な要因であることを示した他,このような変化も中立的に起こりうることが示された.
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