研究概要 |
1.琉球列島と北海道北部を除く日本のほぼ全滅で, 地下浅層の動物相を調査し, その分布範囲が, 北方へは少なくとも北海道の渡島半島におよぶこと, また南方へは九州の中南部までひろがっていることを確かめた. ただし, 北海道の地下浅層動物相は, 地中性動物相の延長だと考えられ, 真の洞窟動物相とは異なる(UE〓NO, 1987). この事情は東北地方の北端部でも同じで, 洞窟自体の動物相の調査結果とよく一致し, ある緯度より北あるいは南に真洞窟性の陸生動物が存在しないことを示している. 2.本州, 四国, 九州の地下浅層には, 眼の退化したいわゆる洞窟動物が広く分布しているが, 沖積平野や純度の高い花崗岩地域にはひろがっていない. 種分化のようすは洞窟の場合とほぼ同じで, 生殖隔離を引きおこす障壁が地下に存在することを示唆する. この障壁になるのは, 花崗岩や不透水層, 高い地下水位などであろうと推定された. 3.更新世の最後の間氷期以後に陸化した新しい地域からも, 固有種にまで分化した陸生洞窟動物が発見された(UE〓NO, 1988およびNISHIKAWA, 1987). 洞窟動物の起源が以外に新しいらしいということは, すでに少し前からわかってきていたが, それを明確に裏づける証拠が, 地質学的によく研究された地域でみつかったことは, 特筆するに値する. 4.陸生洞窟動物の研究史をふまえて, 地下浅層こそその本来の生息場所だと確認されるにいたった経緯を, 総説にまとめて公表した(UE〓NO, 1987).
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