研究分担者 |
楢林 博太郎 順天堂大学, 医学部, 教授 (40052922)
島津 浩 (財)東京都神経科学総合研究所, 所長 (80009901)
中村 嘉男 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (10010026)
福原 武彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10009889)
森 茂美 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80001907)
|
研究概要 |
リズム現象には色々のものがあるが, 今回はヒトに見られる歩行, 振戦, 顎運動, 眼振, 呼吸などリズム運動を取り上げ, それらの中枢神経機構を解明しようとした. これらの運動はいずれも脳幹がかかわっており, また相互に似かよった神経機構を持っている. 総合研究を企画したのは, 働きの面はもとより形態学的裏付け, 更にシステム工学の応用など, それぞれの研究者が相互に密な連絡をとりながら研究を進めることにより中枢神経系の解明が一層進展するものと考えたからである. 3年間で幾つかの新しい事実が明らかになり初期の目的は達したと思う. 歩行運動は左右の肢の交互振動であり, 1側の肢が体を支え(stance), 他側の肢は屈曲前進する(suing). 体を支えるには脳幹からの伸筋に対するトーヌス系が重要であり, 屈曲前進には伸筋のトーヌス系を抑え, 積極的な屈曲を行う系が働く必要があり, その系を脳幹を含む長反射系が明らかにされた. 今後は歩行を誘発する動機motivation機構の解析が重要である. 振戦は正常の場合, 極度に緊張した際にも現われるが, パーキンソン症などでは常に見られる現象である. 振戦を除くため定位脳手術とのかかわりにおいてVim核が重要視され, 更に末梢からのlong loop reflexの重要性も明らかになって来た. 眼振の神経機構の解析は最も進んでいる分野で, 今回も他のリズム運動の発現機序の解析に参考になった. 呼吸運動の中枢神経機構の解析は古くから行なわれて来た分野で, 今回は神経細胞のマーキング等の方法で機能と形態の相関々係が明らかにされつつあるのは特筆される. この方面の研究の今後の進展としては, 姿勢と歩行(移動或いは運動)の中枢神経系の解析であろう. 身体を一定の姿勢に保ち, 続いて運動をひきおこす. これらの切り替えはどのような神経機序によるか今後の課題である.
|