研究概要 |
外乱に際しての内部環境の恒常性維持には刺激を受容する内・外受容器の働き、受容器からの入力情報を統合する視床下部の働きとその出力により調節機能が果される。本科学研究費補助金による研究成果は以下の如くである。 1.摂食調節と代謝:内在性物質としてつくられる2-DTAと2-B40は視床下部化学感受性ニューロンに作用して摂食行動と自律神経出力を調節する(大村)。視床下部外側野ニューロンの視覚性応答には強い可塑性がある(小野)。代謝調節に関係する迷走神経膵臓枝には血糖入力,味覚入力,褐色脂肪組織神経には皮膚温,血糖,味覚,等複数の入力があり視床下部で統御される(新島)。ニューロペプチドにより代謝が抑制され体温が下降する機序の分析(永坂)。性行動や性ホルモン分泌に関係する中心灰白質より発し視床下部に至る経路の詳細について解析した(佐久間)。 2.温度刺激と体温・代謝調節に関する視床下部の役割:体温調節におけるPO/AHの機能を他の温度感受組織が代償することを破壊実験で確かめた(小坂)。視床ニューロンの陰嚢皮膚機械刺激と温度刺激に対する応答性を調べた(中山)。非ふるえ熱産生の調節が交感神経の他にグルカゴンも関与していること(黒島)。交感神経-副腎反射は皮膚および化学受容器刺激により誘発できること(佐藤)。体温調節系と循環調節系の相互関連では迷走神経が重要であること(入来)が報告された。 3.浸透圧刺激と水分:NTSへの肝浸透圧受容からの入力,PBNの出力経路を明らかにした(足立)。視束前野温度ニューロンの浸透圧入力と血圧入力を明らかにした(堀)。室傍核ニューロンの浸透圧,温度,ペプチド入力による出力調節を明らかにした(山下)。骨格筋Naポンプ活性に対する視床下部の役割を調べた(赤池)。視床下部下垂体系機能に関与するペプチドニューロンとアミンニューロンに免疫組織化学的検索を行った(佐野)。
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