研究概要 |
われわれは、看護基礎教育における成人看護学教育内容を、従来の医学の体系による「疾患とその看護」でなく、看護上の必要や特徴に基づいて構造化することについて検討し、すでに昭和58年度総合研究(A)において、12の大項目のもとに教育内容を精選して報告した。 本研究の目的は、これらの精選された各教育内容について、教授実態,効果的な教授法,教育体制に関して大学,短期大学,専修学校について調査し、問題点を明らかにするとともに、今後の成人看護学教育の指針について検討することであった。調査は、あわせて35校において行った。今後の成人看護学教育の指針作成に資するとみなされる主な結果は以下のとおりである。 1.ほとんどの大項目は、成人看護の一分野としてみたときに全体としての教授が必要であるにもかかわらず、それが欠けている。特に、手術患者の看護,がん患者の看護,老人患者の看護,感覚機能障害のある患者の看護の各分野にそれがみられる。その理由として以下のことが挙げられる。(1)「疾患と看護」として教えることが多いため、ある状況下や経過にある患者としてのアプローチに欠けることになる。(2)複数の科目によって取り扱われているため、統合されるべき教育内容が分断される。(3)教科目「看護総論」で取り扱われると成人看護としての学習がなされにくくなる。(4)多数の非常勤講師により教授されると分断され、全体としての統合性を欠くことになる。 2.施設管理(設備および看護業務管理を含む)については、ほとんどの成人看護分野において教授されていない。 3.ICU・CCU・透析・救急・隔離という特殊な状況の看護、および在宅患者の看護の教授は少ない。 4.視聴覚教材は、限られた分野・対象のみに開発されており、偏りがある。今後はこれらを改善することにより、成人看護学の教育を充実する必要がある。
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