研究概要 |
1.隕石の同定・分類:Yamato-69,73,74,75隕石の同定・分類につづいて、昭和60〜61年度は主にALH隕石とYamato-79,80,81,82,83,84隕石を中心に作業を行い、約300個についての精密分類を完了した。粗分類も含め、現在日本が所有している南極隕石は次のとおりである。隕鉄24,石鉄隕石6,コンドライト5309,エコンドライト158,炭素質隕石60,未区分61の合計5.618個。 2.月起源隕石の同定:すでに2個の月起源隕石Yamato-791197(52g),Yamato-82192(36g)が同定されたが、今回新たにYamato-793274(8g)とYamato-82193(27g)が同定され、日本は4個の"ルナメテオライト"を有することになった。最近の研究から、これらの隕石は月の裏側の異なった場所から飛来したものとの考えが有力になり、1個の月隕石は1回のアポロ計画に匹敵する価値をもっていると言われている。 3.輝石を含むパラサイトの発見:パラサイトは代表的な石鉄隕石の一種で、カンラン石と鉄・ニッケル合金からなり、地球のコアとマントルの境界域を構成する物質と考えられている。今回、輝石を含むパラサイトが初めて確認された。これはパラサイトの形成条件(温度,圧力条件)、すなわち、コアーマントルの境界条件を知る上で貴重な試料となる。 4.今後の研究計画について:約5,600個の隕石のうち、精密分析に基づいて分類された隕石は約2,500個である。予備分析の結果では残り約3,000個の中には火星起源と考えられる隕石や、従来の分類のカテゴリーには属さない隕石もあり、新種の隕石の可能性を含み、同定・分類作業は1日1個を目標に今後も着実に継続する予定である。
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