配分額 *注記 |
31,300千円 (直接経費: 31,300千円)
1987年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1986年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1985年度: 21,600千円 (直接経費: 21,600千円)
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研究概要 |
多層膜反射鏡はX線全反射鏡とブラッグ結晶の特長を併せ持った新しい型のX線光学素子であり, 分光, 結像性能の優れた宇宙X線観測装置への応用を目ざしてその基礎研究を行ってきた. 斜入射型X線望遠鏡に用いる場合には焦点距離を変えずに有効面積(口径)の増大, エネルギー帯域の拡大を図ることができる. 更に0.4keV以下のエネルギー領域では光学望遠鏡と同様な直入射型X線望遠鏡が可能になるし, X線分光素子・偏光子にも応用できる. 我々は超高真空電子ビーム蒸着装置によって, Mo/C, Mo/si, Ni/Cの組合せで2d値が60〜200A, 積層数5〜30組の多層膜を作製した. これらの多層膜はCu-Kα(1.54A), Si-Kα(7.13A)Ab-Kα(8.34A), C-Kα(44.7A)の特性X線を用いて反射率, エネルギー分解能ブラッグ角を測定することによって性能評価された. 更に高工研フォトンファクトリ, 分子研UVSORのシンクロトロン放射光を用いて, 14〜250Aの波長域で同様な測定を行った. その結果Mo/C, (2d=160A, N=10)ではCu-Kαに対して80%, Ni/C(2d=72A, N=20)ではC-Kαに対して10%, Mo/si, (2d=190A, N=20)では123〜170Aの波長域で30%以上のピーク反射率を得た. 特にMo/Siの球面鏡を製作し, 直入射型X線望遠鏡として十分な性能をもつことが確かめられた. 又シンクロトロン放射光によって45°入射のX線偏光子としての有用性も確認された. これらの結果をもとに昭和65年度のロケット観測を目指して多層膜反射鏡を用いたX線望鏡の製作を始めている. 多層膜反射鏡の応用範囲は広く, X線顕微鏡, 放射光ビームラインX線光学系, プラズマ計測用X線光学系等があり, 多くの研究者から関心が寄せられている. 今後の課題として膜厚の薄膜化, 波長帯域の拡大があり, 薄膜物性とも関連して更なる発展が期待される.
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