研究概要 |
野尻湖周辺には, 骨器で特徴づけられる旧石器文化(野尻湖文化)が知られ, その解明が進みつつある. 本研究の目的は, 野尻湖底の推積物と周辺に分布する火山灰層中の文化層準(生活面)の層位を確定することにある. 層位学的研究の基本は, 野外地質調査にあり, 多くの時間と人手をかけて, まず, 黒姫山麓一帯の広域的な地質図を完成させた. 次に, その成果にのっとり, 火山灰のキュリー温度, 屈折率, 古地磁気方位の測定, 湖成層の推積学的研究, 花粉分析など, 多くの分野の室内研究を行い, 次のような成果を上げることができた. (1)野尻湖層中の文化層準 下部野尻湖層IIIから上部野尻湖層Iに遺物産出層準が多い. 特に産出が多いのは, (a)下部野尻湖層IIIB(約3.4〜3.1年前):骨製スクレイパー, 骨製ナイフ, スパイラル剥片, ナイフ形石器など. (b)中部野尻湖層I(約2.9〜2.8万年):骨製クリーヴァー, 骨製尖頭器, キル, サイトとみられる化石群と巨石. (c)上部野尻湖層Iの下半部(約2.5〜2.4万年前):スパイラル剥片, ナイフ形石器など. (2)野尻ローム層中の遺跡 野尻湖周辺の丘陵では, 上部野尻ローム層Iの黒色帯(約2.3万年前)から柏原黒色火山灰層最上部(平安時代)までの間に, ナイフ形石器文化, 細石器文化, 縄文文化など11の生活面が存在する. (3)湖底と周辺丘陵の遺跡の層位関係 ほぼ, ガラス質の火山灰層(約2.2万年前)を境として, 湖底では, これより下位に野尻湖文化が, 周辺の丘陵では, これより上位にナイフ形石器文化以降の生活面が位置する.
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