配分額 *注記 |
20,500千円 (直接経費: 20,500千円)
1987年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1986年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
1985年度: 14,300千円 (直接経費: 14,300千円)
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研究概要 |
高温高圧下で合成した岩石と地球深部に由来する岩石, すなわち人工と天然の岩石の二つの側面から, 化学反応にともなう組織の生成と元素の挙動についての解析をおこなった. 天然の岩石は上部マントル物質として北海道の幌満超塩基性岩を, 下部地殻の岩石として吉備高原の塩基性変成岩ゼノリスを用いた. 高温高圧下での合成物の解析から得られた最大の結果は, サブソリダスの温度領域で同時に起きうるいくつもの化学反応の中で, 単純な反応機構を有するものは簡単に起こり, 一方, 複雑な反応機構を有するものは遅延することを, 実験的に示した点にある. このことは, 2つの化学反応式の反応定数を連立に組み合わせ, 地質温度計圧力計としてもちいる従来の平衡論的方法にたいする限界点をはじめて明示したものである. また, これらの実験により元素が移動する際に結晶粒子境界が果たす役割の大きさを示すことに成功した. 実験的手法により得られた理解をも用いて, 高圧下でできた天然の岩石の組織と鉱物化学の解析をおこなったところ, 現在は古い鉱物組合せの痕跡すら残っていない場合でも, 以前のIherzolite相を理解し, 岩石の生成史をより深く, より以前にまで遡って読解できるようになった. さらに, 地殻下部の岩石の解析により, 従来不明確であったAI-, Ti-clinopyroxeneの安定関係に関する理解が深まった. 今後の研究の展開 天然の岩石中の固相反応は実験室において可能であるよりもはるかに長い時間の過程である. 室内実験でそれを再現するには限界があるものの, 今回設置した高温高圧発生装置の高い圧力安定性という利点を生かし, なるべく長時間の固相反応の実験を行ない, 造岩鉱物の化学反応論の進展をはかりたい.
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