研究分担者 |
豊田 直樹 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (50124607)
大城 桂作 九州大学, 工学部, 教授 (40038005)
岩熊 成卓 九州大学, 工学部, 助手 (30176531)
都甲 潔 九州大学, 工学部, 助手 (50136529)
山藤 馨 九州大学, 工学部, 教授 (90037721)
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研究概要 |
磁束ピン止めにおける飽和現象および脱飽和現象を転位や常伝導析出物をピン止め中心にもつNb-TaおよびNb-Tiについて研究を行った. この結果以下のことが明らかになった. 1.飽和現象の場合, 個々のピン止め中心の要素的ピン力fpやピン濃度Npを大きくすると, 量子化磁束格子の弾性は増加する一方, 降伏歪に比例する相互作用距離が減少し, 量子化磁束格子が脆化することが明らかとなった. すなわち, 飽和現象は格子の硬化と脆化が相殺した結果生じる. その機構はこれまで唱えられていたKramerモデルの剪断フローの機構とは異なる. 2.脱飽和現象の場合に量子化磁束格子の脆化が起らず, Npやfpが増加したときに格子の弾性が大きくなっただけピン力密度が増加する. このように同じ材料で飽和から脱飽和への転移が観測され, 飽和特性以上の特性はあり得ないというKramerモデルとは矛盾することが示された. 3.上記の結果等を基になだれフローモデルを提唱し, 飽和となるか脱飽和となるかは格子欠陥を含む量子化磁束格子をピン止め相互作用で安定化できるかどうかにかかっていることを示した. この結果, 実験結果を統一的に説明でき, 要素的ピン力fpやピン濃度Npを十分に大きくすることで脱飽和特性が達成できることを明らかにした. これは現在望まれているNd_3Snの高磁界特性の改善が原理的に可能であることを示したものである. 4.脱飽和の場合のピン力密度のピンパラメータ依存性としてはNp^<2/3>fp^<4/3>に比例するというLarkin-Ovchinnikov理論とNpfpに比例するという筆者らの線型和理論とが提出されているが, 定性的・定量的に線型和理論の結果に近いことが明らかとなった. このことより, ピン止め特性の一層の改善にあたってはピン濃度Npを増加させることも要素的ピン力fpを増加させることと同等に有効であることがわかった.
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