配分額 *注記 |
16,400千円 (直接経費: 16,400千円)
1987年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1986年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1985年度: 10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
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研究概要 |
エネルギー分散型X線分析装置(EDS ; TN-2000型)を購入して, 東大原子力研究総合センターの200KV透過型電子顕微鏡に設置した. これを用いて極微小領域の組成を定量的に分析するための基礎データを蓄積し, 多くの合金材料について定量性を確認した. オーステナイト鋼のイオン照射下におけるキャビティ・結晶粒界周辺のミクロな偏析を測定し, これらが溶質原子のサイズファクターで説明し得ることを示した. また, イオン照射下に特有のニッケルに富んだ非平衡相が存在することを確認し, ミクロ組織変化に対する影響を明らかにした. さらにイオン照射によるカスケード損傷に対してMC型析出物は安定性が高いことを示し, 周辺へのマトリックス原子の偏析が照射下析出物変化メカニズムとして考えられることを明らかにした. オーステナイト鋼のイオン照射下ミクロ組織・組成変化は, 注入するイオン種・エネルギーによって大きな差異ができることが明らかにされた. 例えばリンイオン照射はイオン飛程付近に鉄リン化物を生成し, 他種のイオン照射の場合に比べボイドの生成を抑制する. これらのミクロ組織・組成変化のイオン入射表面からの深さ分布解析から, 注入イオン分布, はじき出し損傷分布の影響および照射温度との関連性を明らかにした. 析出物強化型フェライト鋼では, イオン照射によって析出物の生成が促進されることが示された. また, マルテンサイト相が照射下で不安定となり, 熱的には起こり得ないオーステナイト相への逆変態がおこり, この中に大量のボイドが生成することがわかった. 以上から, 合金材料中にはイオン照射によって非平衡的に偏析・析出物生成・相変態が起こることが明らかにされ, これらをコントロールするパラメータについて多くの情報が得られた. これからイオン照射によって新物質を合成するための基礎的知見が得られた.
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