配分額 *注記 |
17,000千円 (直接経費: 17,000千円)
1987年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1986年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1985年度: 13,000千円 (直接経費: 13,000千円)
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研究概要 |
従来, 回転異性体の研究は赤外, ラマンの振動スペクトルやマイクロ波吸収等の回転スペクトルによってなされてきたが, すべて電子基低状態における異性体間のわづかなスペクトル差を検出し同定するもので, これらの方法の複雑な多原子分子への適用はすでに限界に達しており, 新しい観点からのアプローチが望まれていた. 本研究は現状を打破し, 回転異性体研究の新たな発展をうながすものとして, 電子スペクトルの利用を提唱し, 種々の芳香族分子の回転異性体に適用した. 超音速ジェットで生成した極低温孤立分子について種々のレーザー分子分光法を適用し, 多くの置換ベンゼンの回転異性体が電子スペクトルによって容易に分離して観測されることを示した. これは電子スペクトルが複雑な分子の異性体分離に極めて有効であることをはじめて立証したもので, その意義は極めて大きい. さらに各回転異性体をレーザー二重共鳴分光法によって選択的にイオン化し, これら異性体のイオン化ポテンシャルを正確に求めた. その結果, 異性体内間のイオン化ポテンシャルの差は200cm-1にも及びイオン化による異性体分離の可能性が示唆された. また, 超音速ジェット条件下でこれら異性体と種々の溶媒分子間の錯体形成を研究した結果, 各異性体は溶媒分子と選択的な錯体形成をすることが見いだされた. これは回転異性体の選択的化学反応に通じるものであり, その成果は内, 外から注目されている. さらに回転異性体における分子内大振隔振動ふ分子内水素結合が解明され, エネルギー緩和機構等について貴重な知見が得られた. 以上の成果は初期の目的を完全に達成し, 電子スペクトルが回転異性体研究の最有力手段である事を明確に示したものである.
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