研究概要 |
1)生物検定法の確立:ジャガイモシスト線虫のふ化促進物質の単離に当たって, まず始めにふ化活性測定法を確立した. シスト線虫汚染地より, 毎年9月に土壌を採取し, 風乾後保存した. これからシストを分離し, 1〜2ヶ月水に浸漬し前処理とする. 卵をシストから取り出し, 10日間放置(卵処理)し, pH調製を行う. 続いて供試液を加えて, 暗所23°C, 10日間放置する. この後全体の虫数に対するふ化幼虫を数えて, ふ化率を算出する. ふ化率が50%以上を活性, 40〜50%を準活性と判断した. 2)粗原料の入手と活性物質の性質:粗原料として, ジャガイモ根圏滲出液(標準液), トマト水耕液, トマト乾根の水抽出液を検討した. いずれの原料から得られるふ化促進物質も, pH8以上では速やかに, pH2以下では漸欠失活した. これを防ぐために, ドライアイスを用いて酸性としたのち, アンバーライトXAD-2樹脂に吸着させた. アセント脱着, 30°C以下で濃縮し, 粗抽出物を得た. このもののふ化活性と原料によって変動するが. 10-4〜10-6g/mlである. ジャガイモ根圏滲出液からは, 脂溶性物質, トマト乾根からは水溶性物質, トマト水耕液からは, その両方の性質を持つ活性物質が得られた. 3)分離・精製:上記三種の粗抽出物のうち, 比較的安定と思われたトマト乾根抽出物の精製を行った. 5段階のカラムクロマトと1段階のHPLCで分画し, 最活性部約100ugを得た. そのNMRスペクトルより, トリテルペノイド様化合物郡に属するものと推定ひた. 4)シクロアルタン骨格から, グリシノエクレピンA骨格への誘導, 生薬トラガントより得られるシクロアステガルオールを出発物質として, C, D環上のメチル基の転位を15ステップで, また, A, B環の構築を22ステップで完成させることができた.
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