配分額 *注記 |
12,700千円 (直接経費: 12,700千円)
1987年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1986年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1985年度: 9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
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研究概要 |
本研究の目標は次の3点にあった. 即ち, (1)血清塩, 特にCaを生理的に機能をもつイオン型と結合型に分離して測定し, 全Ca濃度の測定では不明の点を明らかにする. (2)研究の対象にする動物, 特に下等な群において種類を増し, 多様性のある進化過程を考察する. (3)個々の塩の調節を独立した事象として捉えるのではなく, 互いに関連するものとして把握する. (1)哺乳類においてイオン型Caは全Ca濃度の60%と考えられているが, 本研究により, その値は群または種により大きく異なることが明らかになった. 例えば魚類において近縁であるアオミシマとミシマオコゼでイオン型Caの全Caに対する比はそれぞれ65%と53%である. さらに, 硬骨魚17種平均は57%であるに対し, 軟骨魚4種の平均は72%である. この結果はCa結合蛋白が進化の過程で増加したことを示している. また, 富卵黄動物は卵形成時に, ビテロジェニン形成がおこり, 雌で結合型Caの比が高くなると考えられているが, 軟骨魚においては必ずしもそうではなく, この定説に再検討の必要があることが示された. (2)本研究に用いられた動物種類は:板鰓類4, 軟骨魚27, 有尾両生魚4, 無尾両生魚7, 爬虫類5である. これによって得られた成果は研究成果報告書に示すが, 下等水生活より高等陸生への進化にともなうa)血液PH調節機構の進化 b)脳下垂体による一括調節より, 個々の内分泌腺による独立精密な調節への分化の過程が明らかになった. さらに, 同一群に属する種においても, 生態的差による差異がみられた. この結果より当然ではあるが, 群の進化と個の生態的適応は複雑に関与していることが明らかである. (3)個々の塩の調節と, それらの関連性についての結論は得られなかった. しかし, 哺乳類では密接に関連しているNaとKの調節が, 爬虫類では分離している可能性が示され, さらに詳細に検討する必要がある具体的例を呈示することができた.
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