研究概要 |
1.籾の蒸散速度は高温, 低湿度, 強風条件で高く, 水蒸気飽差と正の相関がある. インド型稲の籾は開花期の蒸散速度かとくに高く, 強風による稔実障害, 障害米の発生も多い. 2.高湿による受精障害は開花前1〜2日に最も著しい. 障害は籾温35°C以上でおこり, 40〜44°Cで急進する. 高温は開花前には花粉障害, 開花中は葯の裂開阻害を助長する. 3.インド型稲の花穎は充実遅く, クチクラワックスの集積も弱い,このことはインド稲が乾風障害を受け易い要因であろうと考察した. 4.籾の毛茸はクチクラ化し難く, 内腔に水分を満たしており, 籾の表皮蒸散に重要な役割を果たすものと考えた. 毛茸は強勢花で長く, 弱勢花で短かい, また日本型稲で長く, インド型稲で短い. 日本型陸稲は水稲より顕著に短い. 5.籾殻の内部形態を観察し, 毛茸は凹部を成す外表皮より派生することを認めた. また毛茸の基部に接して集水機能を果たすとみられる染色性の低い細胞群を認め, 籾の脱水経路について考察した. 6.長期貯蔵に伴う古米化の過程で, 米飯のテクスチャーの硬さ的要素が高まり, 粘着性および食味指数は低下した. また水溶液性たんぱく質含有率は減少した. 7.古米化に伴い, 白米中のグルタミン酸含量, そのアミノ酸中に占める割合, 炊飯液のPHなどは減少し, 遊離脂肪酸含有率は増加した. 8.米のアミロースならびに結合脂質の含有率は低温登熟条件で高まる. 古米化に伴い結合脂質は増加するが, アミロース含有率は変わらない. このことから結合脂質は米飯の物性を支配する重要な要因と考えられた. 9.ふ系71号が高温で米粒の発育が助長され, 粒質も向上するのに対し, レイメイは低温登熟性が高く, フジミノリは広温度域に高い適応性を示した. この現象矮性遺伝子の多面的発現の結果と考えられた.
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