研究課題
一般研究(A)
各種組織や細胞を材料とし、細胞膜の生合成と再利用過程を、主として組織細胞化学的方法により検討し、次のような結果を得た。(1)グルコース・トランスポーター(輸送因子)の局在は、ラット脂肪細胞ではインスリン刺激後、ミクロゾーム分画より形質膜分画へと移動する。またラット腎では、主として髄質(集合管、Henleの太い部位、近位尿細管のS3など)に分布し、細胞の基底・側壁部に局在し、生理的な機能と密接に関連する。(2)ヒト胃腺壁細胞内の管状小胞膜は、酸分泌刺激後分泌細管膜と大幅に癒合し、その際GalNAcを含む複合糖質をもつ膜部分の面積が増大する。この過程は、DBAレクチン結合パターンの変化として顕微鏡下で定量的に捕捉し得る。(3)ヒト血小板の細胞膜と開放小管系膜とは、相互に連続しているにも拘らず複合糖質糖構造の点で差異を示す。カチオン化フェリチン(CF)と反応すると、開放小管系は細胞表面の開口部を失い、取り込まれたCF粒子と共に細胞の中心部に集中する。その際マイクロフィラメントなどが強く関与する。またADP、Teleocidin投与により活性化すると、顆粒放出過程に際し、顆粒限界膜は開放小管系膜と、時に細胞膜と癒合する。(4)ラット膀胱粘膜上皮被蓋細胞腔面形質膜のレクチン及びCF結合パターンは、分化や悪性化の過程で、形態像と共に、時にそれに先行して著しく変化する。(5)ニワトリ胚皮膚では、Vitamin AやEGF(epidermal growth factor)により角化やそれに伴う分化が抑制され、同時に基底膜に著しい形態変化が諾起される。平行してEGFの分布や局在も変化する。単離した表皮(基底膜を予め除去)と真皮とを再結合すると、基底膜はヘミデスモゾームと深い関連をもって形成される。その際真皮を予めVitamin Aで処理しておくと、基底膜の形成は抑制される。(6)論文(69篇)、(書籍14篇)、口演(131席)の形で発表(一部予定)した。
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