研究概要 |
法医学や人類遺伝学の分野で幅広く利用されている血清蛋白の一つであるGC蛋白は、等電点電気泳動パターンで判別可能な表現型をもち、これらは三つの優劣のない遺伝子GcZ,Gc1F,Gc1Sによって発現されている。また、この蛋白はビタミンDと結合するために別名ビタミンD結合蛋白(DBP)とも呼ばれ、生理的には血清中やリンパ球上でアクチンと結合して重要な機能を果たしている。DBPの一次構造は早くから研究が始められていたにもかかわらず決定に至っていなかったが、1985年末にYangらによってcDNAからそのアミノ酸配列が決められた。我々はこのDBP(Gc2)の推定一次構造を確認することとサブクラス間のアミノ酸置換を明らかにするために、ヒト血清から三つのホモ接合体Gc2,1F,1Sを塩析と各種クロマトを組み合わせた方法で別個に分離精製して、これらの一次構造を決めることを意図した。分離したGc2型蛋白は完全還元アルキル化後BrCN分解して、生成したペプチドを高速液体クロマトによって精製した。一部のペプチドについては更に酵素消化を行い、逆相クロマトでそれらペプチドを分離精製した。これらペプチドのアミノ酸組成分析とアミノ酸配列分析によって一部を除いてDBP(Gc2蛋白)のアミノ酸配列を決め、その一次構造の確認を行うことができた。同様の方法でGc1Fと1S型の蛋白についての分析を進め、変異プチドのアミノ酸配列分析によってサブクラス間の差異を明らかにすることができた。Gc2-1F-1S間の置換アミノ酸は、152番目が各々G1y-G1u-G1uで、416番目がAsp-Asp-G1u,420番目がLys-Thr-Thrであった。
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