研究概要 |
肺リンパ系と各種肺疾患の発表および進展との関連性に関する基礎的, 臨床的な研究の成果は以下の通りである. (1)肺リンパ系について・・・ひと胎児肺での研究で, 従来の岡田の報告に追加すべき所見はなく, 肺内リンパ管の分布, リンパ流の系統が再確認された. 輸出リンパ流として, 上行性リンパ経路に加えて, 下行性リンパ経路の重要性を指摘し, 腹腔内リンパ節への炭粉沈着や肺癌の転移を明確にした. (2)気管支随伴リンパ組織(bronch associated lymphoid tissue=BALT)のリンパ球の分布を, ラット肺移植の研究と関連して, 免疫組織化学的に検索し, T細胞のサブタイプの分布や変動を明らかにした. 超微形態学的には, リンパ上皮のcryotと後毛細管静脈であるhigh endothelial venula(HEV)がマクロファージやリンパ球の出入の重要な門戸であることを明示した. (3)肺癌の腹腔内リンパ節転移に対する積極的外科療法を提唱した. 胸骨正中切開による反対側縦隔リンパ節の郭清及び開胸・開腹術併用による腹腔内リンパ節の郭清を広範郭清術として臨床的に適応した. (4)経リンパ行性制癌剤投与・・・開胸手術下に(a)肺胸膜リンパ管(b)分岐部リンパ節からアドリアマイシン溶液を注入投与し, 癌転移リンパ節にも制癌剤を証明し, 微小転移巣に対する有効制を示した. また長期停留制剤型としてアクラシノマイシン含有ポリ乳酸マイクロフェアーを新しく開発した. (5)実験的肺移植におけるリンパ組織の反応・・・近交系ラットを用いて, 同系移植, 異系移植を行い, 肺および免疫系組織のリンパ球サブセットの変動を検索した. その結果, 末梢血, 気管支肺胞洗浄液中のリンパ球サブセットの変動は, 移植肺における細胞反応を反映しており, これらを追跡することにより, 拒絶反応の早期診断が可能であることを示した.
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