研究概要 |
脳動脈瘤や動静脈奇形などの頭蓋内血管異常が存在すると、血流の乱れによる微弱な音響信号が発生する。本研究では頭蓋内血流雑音を頭皮上に配置した高感度ディテクターによって検出し、病変の有無,程度,種類,部位等を診断するシステムの基となるデータの基礎的検討、分析アルゴリズムの開発,ディテクターの改良,測定システムの試作検討を行った。 先ず、60年度は、システム構成の礎となるハードウェア部分の設計,構成に重きを置いて検討を行った。即ち、ディテクターの性能向上については、頭部の機械インピーダンスの測定を行い、その結果を踏まえて頭部・ディテクター間の音響的結合状態について等価回路表示を行い、良好な特性を得るための設計指針を明らかにし、これに基づいたディテクターの試作を行い、所要の性能を得ることができた。測定の障害となるアーティファクト混入防止のための吸音材についても検討を行った。次にデータ表示システムについては、血流音の時間波形および心電波形をロールモード表示するようにした。 続いて61年度は、前年度完成した試作ハードウェアを用いて、実際の患者の音を採取し、コンピュータに取り込んだ後、各種のソフトウェア上の処理方式の検討を行った。その結果、最大エントロピー法を用いたスペクトル算出結果を、R波からの時間をパラメータにとって鳥瞰図的に表現したものが良好な診断情報を与えることがわかった。この他、高次スペクトル解析の可能性についても検討を行った。 以上の検討の結果、音響的診断方法は、患者に与える苦痛が少なく、集団検診等でも十分使用できることが明らかになった。
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