研究課題
一般研究(A)
ミオシン分子は2つの頭部から成る。ミオシン双頭が互いに異なるのか同一なのかを決定し、ミオシン双頭構造の生理学的機能を解明するのが本研究の最終目的である。ミオシンを蛋白分解酵素で限定分解することにより、ミオシン頭部(S1と呼ぶ)のみを切りだし調製する事が出来る。無機燐酸のアナログであるバナジン酸(Vi)とADPの複合物は遷移状態ATPアナログとしてミオシンに強く結合する。Vi+ADPを可逆的親和性ラベルとして用いてミオシン活性部位の不均一性を判定するキネチックス実験を行った。その結果ミオシンには少なくとも2種類のものが有ることが示唆された。その結果に基づき高分解能ADP親和性カラム法でS1を2種類の分画に分けることを試み、それに成功した。しかし、その2分画はS1の構造的差異を反映していなくて、むしろ分画以前にS1が取っている2つの状態に対応していることが判った。ミオシン上にTNBSで素早く特異的に修飾されるレジン残基が1個あり、MgPPiの存在下ではその数は半分になる、という報告がある(これが、"構造的"に異なる2種類のS1の存在を示す証拠とされている)。これと、上記の結果との関係を調べるために、このTNBS反応を精密に計測し、解析することが出来るシステムを分光光度計+計算機の組み合わせを用いて作った。その結果、MgPPi中だけでなくMgADP存在下でも同様にミオシンS1の半分のみが高反応性リジンの修飾を受けることを見いだした。修飾後のATP分解活性の解析から、EDTA-ATPase活性の異なる2種類のS1が存在することが示唆されている。これらの結果は、MgADPに対する結合様式の異なる2種類のS1が存在していることを意味する。現在、TNBS修飾上の違いを指標にしてこれらの(推定されている)2種類のS1をクロマトグラフィーで分画することを試みている。それらとミオシン1分子の双頭構造との関係を近い将来に解明したい。
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