研究概要 |
ラットにストレス刺激を与えると一過性の鎮痛効果があらわれる. これをストレス誘発鎮痛と呼んでいる. 中枢神経系の形態的, 機能的可塑性と幼弱期にとくに富んでいる. もし, ストレス刺激をこの時期に与えるなら, 永続性のある効果が期待されるのではないだろうか. この仮設検証のために一連の実験が行われた. 1.ラット新生児期(0〜21日令)に1日2回, 30分間の電撃を継続的に与える. 2.ラットの成熟を待って, 150日令に生物化学検査を行った. 3.オピオイド受容体結合テストの結果によれば, オピオイド受容体数, 親和性ともに実験群と続制群で差がなかった. 4.行動テスト結果によれば, a.150日令の実験群はホットプレート法による痛み刺激に鈍感になっており, 仮設が検証された. b.モルヒネに対する感受性が有意に強く, オピオイドの関与が示唆された. モルヒネ拮抗薬ナロキソンはストレス誘発鎮痛を有意に抑制した. c.モルヒネ依存ラットを作り, 退薬時の攻撃行動を観察すると, 実験群のラットの退薬症状は弱かった. 4.以上の結果から, 新生児期に与えたストレスはラットのオピオイドシステムに変化を及ぼし, 成熟したのちのラットに侵襲刺激に対して耐える効果をもたらした. この効果は受容体数, 親和性に変化のないことから, シナプス前ではなく, シナプス後になんらかの効果をあたえたためと考えられる. 5.3年間の研究成果は学会発表2, 雑誌論文3, 単行本一章として公表された.
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