研究概要 |
1.1-2歳児の文と認知能力の発達の追跡実験:1歳前半から約1年半追跡した3名の幼児の言語発達と認知発達についての資料のうち、特に統辞文発生と認知発達、遊びの発達の関係についての資料を分析した結果、次のことが明らかになった。(1)統辞文発生の時期は3名でも個人差が大きく,それと認知発達の個々の尺度との間には一貫した対応関係は認められない。(2)しかし、象徴遊びの発達、特に、その組合せの発達と、発話の脱文脈化、統辞文の発生の間に一定の対応関係が観察される。 2.6歳児の文の構造の自覚の発達:20名の6歳児について、疑問詞を表すシンボルマークを用い文の統辞・意味論的構造についての自覚の発達を調べた結果、次のことが明らかにされた。(1)簡単な教育を行うだけで、就学直前の6歳児の約半数は、文の統辞・意味論的構造についてのモデルを構成でき、初歩的な自覚が発達している。(2)そのモデル構成課題は、保存未習得の幼児でも可能で、保存課題の遂行との間に強い対応関係は存在しない。 3.形式的思考操作と文の理解能力の発達についての縦断的調査:幼稚園年長児,小学2,4,6年の児童約70名に条件文の解釈と論理的推論に関する課題を与え、その発達を調べた結果、次のことが明らかにされた。(1)子供の条件文の解釈には、省略的,連言的,双条件的,条件的解釈の反応型があり、その順に発達する。(2)論理的推論ができない子供でも条件文を正しく解釈でき、条件文の解釈と論理的推論の発達の間にはデカラージュがある。なお、実施した幼児の言語発達の追跡資料、3-6歳児の文の理解についての調査資料等が年度内に分析できずに残った。資料の分析作業が全部終了次第、改めて、公刊する予定である。
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