研究概要 |
高齢者や障害者をも包み込んだコミュニティづくりの可能性やその発展の条件等の検討や分析を行った本研究では, 3ヶ年の調査研究の成果を以下のような5つの報告にまとめた. 第I部の「在宅寝たきり老人をめぐるソーシャルサポートネットワーク」では, 二地区での比較をふまえて, 寝たきり老人と同居家族をその中心におき, 別居子と知人をその周辺に配し, 公的機関がそれらを全体的にサポートするという新しい関係性としてのネットワークの創造が提唱されている. 第II部の「ひとり暮しの老人の健康と援助ネットワークに関する研究」では, 2ヶ年るわたる追跡調査をふまえて, 健康状態の変化を中心として, どのような老人たちをどこまで在宅ケアの対象としていくかについての合意を形成していくことの必要性が論じられた. 第III部の「川崎市におけるボランティア活動の形成と地域への広がりに関する研究」では, 川崎市におけるボランティア活動が, 施設の中に入り労力奉仕をするというものから, 近年では, 地域に住む障害者や老人や児童にかかわっての活動へと移行し, 拡大してきていること, さらにはそのようなボランティア活動の広がりや変化をその要因をさぐりながら明らかにした. 第IV部の「産業社会における透析患者(成人男子)といわゆる『健常者』との共存関係の検討」では, 「病い」からの疎外感とその回復のためには, 新たな価値観に基づく生活の再建が不可欠であることが明らかにされた. 第V部の「障害者を包み込んだ保健と福祉のコミュニティづくりに関する調査研究」では, 施設や病院の社会化や開放化を押し進め, 精神障害者を包み込んだ地域づくりに取り組んでいる先進的な事例を取り上げ, 住民と障害者との日常的な接触や交流がどのようになされ, 住民の障害者観にどのような影響を及ぼしているかを明らかにした.
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