研究概要 |
都市社会学の中枢的課題は都市の本質規定とそれに基づく都市社会構造論にある. 日本でその体系的概念枠組を最もよく示したのは鈴木栄太郎である. 鈴木は都市の本質を結節機関の存在に求めるユニークな規定をおこなったが, それを基本とする都市社会構造論には末だ様々な問題が残されていた. 我々はこの結節機関論から都市社会構造論に接近する場合, 鈴木の経験的論証の内容に立入ることから始めたい. 都市的諸機関は具体的には非農林漁業事業所として把握される. 我々は都市を事業所構成のあり方から把握する. また事業所の基本的性格分析を通して都市と事業所の関係を検討した. その結果, (1)機関論の視点からは「都市は機関の存在の量と規模に規定された人口集積体」として把握される. しかし, それはマクロな点では妥当であるが, ミクロな問題では必ずしも妥当しない. 機関の集積は中心性機能を有す都市ほど優越で, 中心都市の周辺都市では著しく劣勢である. 周辺都市は中心都市への依存度を深め, 非自立的となっている. 中心都市から離れた都市は機関集積においても自立的である. (2)都市規模の差異は機関の量的差異と質的差異を内包している. 下位都市ほど家族的個人的単独的事業所が多数を占め, 日常消費的機能充足を満たすにとどまる. 上位都市ほど資本主義的大経営の複合的事業所構成が支配的で, 管理的サービス的機能を持って都市を越えた機能充足の役割をはたしている. (3)機能の集積量とその質的内容は産業別に強い規定性を受けていた. その最も対照的差異を示すのは製造業と卸小売業でとくに製造業のあり方が個別都市の機関構成上の大きな変動要因となっていた. 都市の諸形態は, この産業部門の機関構成上の差異によって明瞭に区分される.
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