研究概要 |
本研究では, 東三河地域の類型化に即して, (1)上流山間地域として, 東栄町月・御園地区, 豊根村三沢地区, 設楽町八橋・南・三都橋地区, (2)中流地域として, 鳳来町能登瀬・布里地区, 新城市矢部地区, (3)下流地域として, 豊橋市石巻・神野新田・豊栄地区を, 調査対象地区に選び, それぞれのむらが, 「日本経済の高度成長」によってどのような社会変容を現わしているかを, 主要にはむらの社会構造に注目して分析を行なった. 同じく豊川の流域社会(「モデル定住圏」)として一括される東三河の地域社会が, 現実にはその下流農村地域が総合農政の「光」の部分であるのに対し, 水源の山間地域はその「影」の部分として存在している. すなわち, この地域では山村特有の過疎化・地域高齢化が著しく進行し, 住民生活そのものが危機に直面しているといっても過言ではない. 水の受益地としての下流社会との地域間格差はますます激しくなる一方であり, そのうえ多量の水を必要とする下流地域の側からは不足する水を求めて「ダム建設」の要求すら出てきた. これを合理化する論理が, 「東三河は一つ」論である. 奥三河の山間地域は, 「花祭り分化圏」たる天竜水系, 豊川水系, 及び西三河に向かう矢作水系という3つの生活圏に区分することができるが, 天竜水系に属する町村が豊橋との結び付きを強めようとしているのに対して, 豊川水系と矢作水系に属する地域は豊田・名古屋の労働市場圏に包摂されている. つまり, 水源山村はそれぞれの水系の下流域都市の工業集積の程度に規定され, また「過疎法」による道路整備の条件によって, さまざまな生活基盤を見いだしているのである. 過疎化・地域高齢化という社会変動のなかで, 個々の村がどのような対応を示し, 地域解体の危機に対していたかに社会的統合がはたされているか, これが本研究が明らかにした課題である.
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