研究分担者 |
加藤 信孝 佛教大学, 社会学部, 助教授 (60066412)
荒木 功 佛教大学, 社会学部, 助教授 (20097869)
山口 信治 佛教大学, 社会学部, 教授 (60066404)
浜岡 政好 佛教大学, 社会学部, 教授 (80066422)
谷口 浩司 佛教大学, 社会学部, 助教授 (30086053)
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研究概要 |
西陣は, 日本最大の和装織物の総合産地である. その伝統的な産業の町「西陣」のいわゆる「空洞化」, すなわち, 産地としての機能が低下しているなかで, 地域での社会生活がどのような変化をきたしているかをみるのが, われわれの基本的なテーマであった. 労働集約的な家内工業として営まれる西陣織物業は, 製織段階の前後に複雑な工程を発達させ, それぞれが独立して, あたかも町が一つの工場であるかのような社会的分業を形成させてきた. このような地域の社会的性格が, 工業によって規定される都市的性格と同時に村落的性格によって支えられていたことが推測される. 「織りの丹後」, 「撚りの越中」といわれ, かつて同郷集団が分業化された一定の工程を担ってきたことも明らかにされている. 「西陣ムラ」といわれる所以である. しかしながら, 「産地の空洞化」は「共同体的な西陣」を解体させているのか. 西陣の町内の人々の関係を「義理の共同体」と規定した研究がみられる. 戦後, 日本が経済成長の過程を歩むなかで, 一般的に人々の地域での人間関係が希薄になっていることが指摘されるとしても, 果たしてこの地域での人々のあり方が「義理」=形式であるのか. われわれの調査結果では西陣の人々は町内の生活自体にもう少し積極的意味を見いだしている. 「織屋とデンボは大きくなるとつぶれる」といわれてきたが, 織屋の階層分解が進んでいる. そして地区内での雇用はきびしい. 「だからこそ」とは即断はできないが, 西陣ではまだ地域が息づいていることを予測させる. この地域が歴史的に「相互組織」をつくりあげてきたことはよく知られているところだが, このような組織がいまなお一定の機能を担って地域を支えていることも, われわれの調査によって明らかにされた.
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