研究概要 |
1.本研究は, 現代日本の教育問題の中では研究は遅れているが社会的関心が高い大学入試者選抜問題に着目し, とくにその制度の歴史の実証的解明, その特質の究明を目的とした. 2.事がらの性質上入学者選抜に関しては秘密事項が多いが, そのシステムは戦前にはたいてい学則, 学部規程党で明示されていたので, 本研究は, 入学者選抜に関する基礎的事項を記載した各校の『大学一覧』『学校一覧』の各地における所蔵状況を調査し, これから必要なデータを収集した. この所蔵状況調査結果も研究成果の一環として公表したいと考えている. 3.本研究では, 未解明部分の多い戦前の高等教育機関の入学者選抜を重点的に調査整理した. (1)旧制大学については, 選抜の歴史の概要, 入学に関する優先順位性の多様性, 旧制大入学者選抜の特質と矛盾の象徴である白線浪人問題, 女子の入学を可能ならしめた制度と入学の実態, 殖民地に立地した帝大の進学制度, 等を主として帝大, 官立大につき調査整理した. (2)旧制高校については, 1901年までの単独選抜時代の選抜方法, 選抜方法が統一された1902年以降の選抜方法の変遷とくに共通試験総合選抜と統一期日単独選抜とが交互に繰返された経過, 一時期併用された無試験入試の実態, 内申書による2段選抜など特異な方法をとった1945年入試, などにつき調査整理した. (3)旧制専門学校は終始単独選抜だったので, 東京商工, 盛岡高等農林, 神戸高商など歴史の古い学校を中心に調査し, 実業学校卒が意外に多い等の入学者の多様性とこれに関連した教育過程の接続問題, 無試験検定の併用など選抜方法のくふう等の問題を解明した. (4)学年始期と入試期日との関係についてはとりたてて調査した. (5)新制大学については, その成立期の選抜方法をやや詳しく調べた. 4.以上の調査研究の概要を報告書にまとめたが, 詳細な内容は別途に整理し公刊したいと考えている.
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